バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?
みなさんは「バーンアウト(燃え尽き症候群)」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
医療・看護の現場では、日々の業務負担や精神的ストレスの蓄積がバーンアウトや離職につながるリスクが指摘されています。
特に管理職に就く看護師は、部下の育成や人事、組織運営など、現場のケアとは異なる役割を担うことで、独特のストレスを抱えやすいとされています。
今回は、論文「看護管理職の役割ストレス・労働負荷とバーンアウトとの関連」(中山・香月,2020年)をもとに、論文の要約と愛玩動物看護師のキャリア形成に絡めた私の考えをお話ししたいと思います。
研究で明らかになったこと
今回紹介するのは、「看護管理職の役割ストレス・労働負荷とバーンアウトとの関連」(中山・香月,2020年)という研究です。
この調査では、経験豊富なスタッフと管理職の看護師を比較し、バーンアウトに影響する要因を分析しました。
結果として、管理職だからといってバーンアウトが強いわけではないことが分かりました。
しかし、管理職には特有のストレス要因がありました。
例えば
・役割葛藤(異なる立場の期待がぶつかること)
・役割曖昧さ(どこまでが自分の責任か不明確なこと)
・業務の変動性や高度な判断を求められる場面
これらが強く影響し、精神的な消耗や達成感の低下につながると示されています。
つまり、単純な「仕事量」よりも、質的なストレスが管理職に重くのしかかっているのです。
動物看護師に置き換えてみると…
この構造は、私たち愛玩動物看護師にも当てはまるのではと思います。
キャリアを重ね、「主任」「統括」「リーダー」といったポジションを担うと、次のような課題に直面することが多いのではないでしょうか。
・獣医師、ケアスタッフ、飼い主、受付専任スタッフなど、さまざまな人から期待の板挟みになる
・「これは誰の仕事?」と曖昧なまま進んでしまう業務がある
・突発的な手術や緊急対応で予定が崩れ、変動の激しい毎日になる
・現場のケアだけでなく、教育・調整・マネジメントまで求められる
こうした負荷を理解し、あらかじめ準備しておくことが、キャリアを長く続ける鍵になると感じます。
キャリア形成へのヒント
この研究から学べることは、「バーンアウトは、量ではなく質でも起きる」という点です。
動物看護師がキャリアを積み、管理的役割を担う時には
①役割を明確にし、優先順位を整理すること
②曖昧な範囲はチームで対話しながら調整すること
③判断負担を軽減するためのマニュアルや相談体制を整えること
④組織としてリーダーを支える仕組みを整備すること
これらが重要になります。
「調整力」や「役割デザイン力」といったスキルは、動物看護師としての専門性を支える柱のひとつになるでしょう。
感想
私はこの論文を読んで、改めて 「キャリアを積むにあたって、責任やストレスの質が変わる」ということを強く実感しました。
実際にリーダー職を担う愛玩動物看護師さんからご相談を受けていると、
「役割の変化による責任の変化へのプレッシャー」や「スタッフとの関係性が変化した気がする」といったように
葛藤や悩みを感じる声も度々聴かれます。
愛玩動物看護師が管理職へとステップアップする時期は、単に知識や技術を磨くだけでは乗り越えられません。
役割をどう理解し、どう調整していくかという「キャリアのデザイン力」が問われるのだと思います。
私自身も、これから愛玩動物看護師のキャリア支援に携わる中で、こうした研究を背景に
「役割の見える化」
「負荷の分かち合い」
「支援体制づくり」
を意識していきたいと感じました。
そして、愛玩動物看護師としてのキャリアに、リーダー職に就いた転機を、どのようにプラスに取り入れていくのか?
という視点も併せて、伝えていきたいと思いました。
バーンアウトを防ぐ工夫は、キャリアの持続可能性そのものにつながるはずです。